「公取委、セブンイレブンに排除措置命令」に思う
公取委が、加盟店の見切り販売を制限したとして、
セブンイレブンに排除措置命令を出しました。
「そうなるよな」「そうであるべきだよな」と思いつつも、
過去の報道なども含めて考えさせられるものが
ありました。
最近のエコブーム、不況などを背景に、賞味期限切れ
または直前の弁当を有効利用している”コンビニ”の例が
報道されています。
ひとつは、賞味期限が切れてしまった食品を回収し、
肥料に加工して、契約農家などに使ってもらうという
試み。
もうひとつは、貧困層が多く住む地域で、賞味切れ
直前の弁当を食堂に提供し、来店客は食堂内で
100円均一で食べられるという試み。
どちらも「もったいない」ことを避ける方法として、大いに
共感を覚えました。
この2つの試みが、加盟店にとって多少なりともの収入に
繋がっているのか判りにくかったのですが、素直に
観れば、寄付しているように解釈できました。
話は変わりますが、セブンイレブン・ジャパンの本部も
草創期からの好業績の結果、その経営方針に慣性が
働いてしまっていたのではないかという気がします。
とうのは、実質的な創業者である
セブン&アイ・ホールディングス会長 鈴木敏文氏は
当時から、「在庫を憂えず、機会損失を恐れよ」を
商売の根幹に据えているからです。
同氏著の『商売の創造』には、こうあります。
この精神が社内に染み付いているからこそ、本当は、リスクを小さくするためにこそ、積極的な商売を心がけなければならないのです。積極的な商売によって機会損失をなくしていけば、必ず売り上げを伸ばし、利益を上げることができるのです。
染み付いているという意味でエクセレント・カンパニーで
あり続けたわけですが、鈴木敏文会長が現場を退き、
ここにきて、「在庫を憂えず、機会損失を恐れよ」が
慣性となって働いてしまっているように思えたのです。
あるいは、こんなこともありました。
顧客第一との思いから、鈴木敏文会長が「後入れ先出し」を
言い出したことがありました。
本来、廃棄リスクを考えれば、「先入れ先出し」が当たり前。
どのスーパーやコンビにでも、賞味期限が切れていない限り、
古いものほど手前に並んでいます。
なかには奥のほうのより新しいものを、日付を確認して選ぶ
客もいますが、さっさと手前から取っていく客が多数派です。
当時の鈴木敏文会長はこの点が気になったらしく、結果的に
顧客により新しいものを買ってもらおうと、先のような提言を
行ったのです。
が、このときはさすがに多くの加盟店や社内から、「廃棄リスク
が大きくなりすぎる」との反対の声が上がり――私も反対する
と思います――実現には至りませんでした。
このように考えると、徹底することと方向転換することの
バランスが取れていた状態から、徹底してきたことを続ける
という風土に変化していたのかもしれないと思ったわけです。
asahi.com によると
とのことですが、本部の言っていることは正論だと思います。加盟店側は「見切り販売をせずに本部の要請通りに弁当などを捨てると、大きな損失が出て経営が圧迫される」と主張。本部側は「安易な見切り販売は中長期的に加盟店の利益にならない。発注精度を高めることがなによりも重要だ」などとして対立していた。
考えようによっては、発注権限が加盟店側にあるので
あれば、廃棄リスクは加盟店が負うべき、とも言えます。
しかしながら、本部が加盟店に対し、「在庫を憂えず、
機会損失を恐れよ」を徹底していたのであれば、加盟店に
すべてのリスクを負わせるのは酷です。
打開の方向はいくつかあるでしょう。
1.見切り販売は認めず、廃棄リスクを相応に分担する
2.発注時にある条件を満たした分だけ見切り販売を認める
3.発注制度を高めるため、本部が人員を割く
4.加盟店の発注権限に制約を設ける
5.加盟店契約を2種類用意する(オプションを設ける)
≒見切り販売を行わない加盟店を条件面で優遇
etc.
先の asahi.com の記事では
そうですが、これでは、値引き販売に制限(と段階)を公取委がセブン側に作成を求めている「加盟店が見切り販売をする際のマニュアル」には、「販売期限の何時間前から、何円まで値引きをすれば加盟店が利益を確保できるか」などが具体的に記されることが想定されている。
設けるだけで、”考え方としては”根本的な話にならない
のではないかと思います。
結局は、消費者に「もったいない」と思わせない施策を
打ち出したコンビニが支持されることになるのではないかと。
セブンイレブンの知恵に期待しましょう。
P.S.
基本、直営店ばかりなので問題は表面化していませんが、
マクドナルドを筆頭とするファーストフード店の店頭に
明け方になると大量の産業廃棄物が出されていることの
ほうに、より問題を感じます。
(最近、その量は減ってきたとは言え。)
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