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20ミリシーベルト/年問題について 

年間の許容被曝量が1mSvから20mSvに引き上げられたことを受け、文科省前で抗議集会が開かれるなど、猛反発が起きています。
山本太郎氏も参加していますが――筆者もウルルンの頃からのファンで、パプアニューギニアで半裸(以上)になって、Pケースを付けていた姿が今も印象的です――今日のお昼前になって、以下のようなニュースが流れました。

福島県内の子供、年1ミリシーベルト以下に 放射線量で文科省方針  :日本経済新聞

福島の学校、線量年1ミリ・シーベルト以下目標 福島原発 特集 YOMIURI ONLINE(読売新聞)

しかしながら――

〈福島県内の学校に通う子供が受ける放射線量を年間1ミリシーベルト以下にすることを目指し、低減策に取り組む方針を明らかにした。ただ、屋外活動を制限する毎時3.8マイクロシーベルト、年換算で20ミリシーベルトの暫定基準は撤回せず、夏休みとしている見直し時期も変更しない。(中略)1ミリシーベルト以下を目標にする姿勢を明確に示す必要があると判断した〉とあるように、”あくまでも目標値”というニュアンスが強く、なし崩しにされないよう、継続監視が必要であることは論を俟ちません。抗議集会の参加された方の努力が確実に実を結べばいいのですが……。

翻って、この年間20ミリシーベルトとは、具体的にはどれほどの数字なのでしょうか? 「年間1ミリシーベルトとは、1年間で体の全細胞(のDNA)が損傷するほどの被曝量」という話も出ているようですが、「そんなバカな」「ほんとうのところどうなの?」という反論、疑問に答えてみたいと思います。 


事前知識としては、当ブログの以下の記事などを参考にしてください。

外部被曝、内部被曝、半減期、ベクレル[Bq]、シーベルト[Sv]……

大気中のベクレル値をシーベルト値に換算(変換)――ラドン222やヨウ素131を吸入摂取した場合のシーベルト値の試算

まず、年間20mSvという数字がどこから出てきたかですが、おそらく

シーベルト - Wikipedia の 表にある、「人間の健康に影響が出ると証明されている放射線量の最低値」である100mSvを単純に5年間で割ったというような決め方だったのでしょう(簡単に撤回するところを見ると)。

たしかに、1mSvの欄には、「一般公衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度(ICRPの勧告)。」とあります。


で、今回は、20mSvがどれくらいの放射能に相当するのか逆算してみたいのですが――

例として、食物摂取によって20mSv相当の137Csで内部被曝する場合を考えてみます。

以前の記事でも参照しましたが、食品から受ける放射線量(預託実効線量)計算例に沿って計算してみます。

――と、その前に、137Csの崩壊パターンは以下です。

137Cs →93.5%→ 137mBa
137Cs → 6.5%→ 137Ba(安定)

137mBa(半減期2.55分)→89%→ 137Ba(安定)+ hν(γ線)
137mBa(半減期2.55分)→11%→ 137Ba(安定) ※内部転換電子

∴137Cs → 137Ba + e- + hν(83.2%)

先のサイトの計算例に戻ると、0.20Bq/kgのアジを1日に12.5gずつ、1年間食べ続けると0.000012mSvの被曝量になるとありますから、これが20mSvになるためには

0.20Bq/kg×20mSv÷0.000012mSv を計算して、そのときのアジの放射能は 3.3×10^5Bq/kg となります。

つまり、33万ベクレル/kg に汚染されたアジを平均的に食べた1年間の被曝量に相当します。
※この条件下でのアジの総重量は12.5g×365日で、約4.6kgになります。アジ30尾くらいですかね。

通常、水や牛乳なら数百Bq/kg、一般的な食品でも500Bq/kgが限度――足柄茶の記憶が新しいと思います――ですから、これはたいへんな倍率になります。

かつ、≪内部被ばくに関する線量換算係数≫ - 緊急被ばく医療研修 の表を見れば分かるように、137Csの場合、吸入摂取は経口摂取の3倍の影響力があります。

ということは、単純に考えると、大気中のほこりなどと一緒に、137Csで1年間を通じて被曝するということは、100万ベクレル/kgのアジを平均的な食べ方をしたときに相当するということです。

たしかに、子供にこの基準を当て嵌められたら、堪ったもんじゃないということだけは断言してよさそうです。

因みに、同じ表には、1日に1箱のタバコを吸う人は、それだけで年間10~40mSvほど被曝しており、そういう人と同居している人が副流煙によって受ける被曝量は年間0.8mSvと読み取れます。


翻って、「年間1ミリシーベルトとは、1年間で体の全細胞(のDNA)が損傷するほどの被曝量」という話の信憑性はどうでしょうか?

ます、内部被曝と言っても、α線(陽子/水素原子核)やβ線(電子)の影響は、中性子やγ線に比べれば誤差程度ですので、上記相当量の
137Csは1年間にどれくらいのγ線を出すかを計算してみます。

33万Bq/kg × 83.2% ≒ 28万Bq/kg
のγ線放出量相当を1日に12.5g食べるということは、
1Bqというのは1秒間に1個の原子核が崩壊することに相当しますから、
280000Bq/kg×0.012kg×86400sec/day
を計算して、
1日に2.9億回、γ線が体内で放出されている状態
とうことになります。

一方で、体の細胞の数は、20歳前後がピークで約60兆個であり(1兆個/kgとほぼ考えてよい)、子供の場合、小学4年生の平均体重がほぼ30kgですから、この時点での体の細胞の数は約30兆個ということになります。

30兆に対して2.8億、ほぼ10万:1です。

この20分の1レベルが、「一般公衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度」とされていることの妥当性は措きますが(他の計算方法も含めて、そこまで厳密には計算できませんので)、はたしてこれが、「1年間で体の全細胞(のDNA)が損傷するほどの被曝量」と言えるかどうかと問われれば、さすがにそれは「No」です。仮に365日を掛けてもまだ3桁違いますし、日々の新陳代謝――アポトーシスやDNAが修復されたり――もありますから。


で、今回の筆者なりの結論は――

a.子供は年間数mSvが限度。20mSv/年は基準値としては大きすぎる
  (最低でも5~10倍程度大きい)。

b.一方で、「20mSv/年は1年間で全細胞が壊れるほど」は
  あまりにも大袈裟。

の2点です。

主張していること(求めている結果)が正しくても、その理由に科学的な虚偽が交じっていると、納得感が下がってしまいますし(勿体ない話になってしまう)、却って話が怪しくなってしまいます。受け売りをするときには、最低限、誰がどこで(どの文書で)そう言っているのか、大本の出典を明示すべきでしょう。

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