暮らしとお財布にやさしい、心とお金の余裕を生む情報活用TOP サイエンス・環境・食・健康
> タングステン(W)から白金(Pt、プラチナ)をつくることはできるのだろうか?

タングステン(W)から白金(Pt、プラチナ)をつくることはできるのだろうか? 

前々回の「金(Au)は人工的につくることができる!」の続きです。

常温核融合にせよ、粒子加速器を利用するにせよ、そういう方向で金
(Au)をはじめとする貴金属を合成しようとするのはナンセンスだと思っていますが、最近になって、「元素転換」と呼ばれる、注目すべき原子核の合成法が出てきていることはご存知でしょうか?

論よりは証拠、まずは、このサイトを先に見てください。

三菱重工 先進技術研究センター|Pd多層膜の重水素透過による元素変換の観測

物理や化学をちょっとでも齧ったことがある方なら、なんだかすごいことが起こっているということは、直感的に分かりますよね。

Pd多層膜にCs(セシウム)を添加して重水素ガス(D、デューテリウム)を透過すると、CsがPr(プラセオジウム)に変化しています。

同様に、Sr(ストロンチウム)がMo(モリブデン)に変化しています。

■理論的解明は今後の課題。と正直に書かれているところにも好感が持てますし、なんと言っても三菱重工です。信憑性は高いですね。やってみたらこうなった、という段階かもしれませんが――


で、同サイトにも書かれていますが、この反応の核心部分を先日の書き方で表わすと

133Cs55 → D(g)/Pd多層膜 → 141Pr59

88Sr38 → D(g)/Pd多層膜 → 96Mo42

ということになり、原子番号(陽子数)が4増え、質量数(陽子数+中性子数)が8増えています。しかも、同サイトのグラフからは、かなり選択的にこの「原子番号:+4、質量数:+8」が起こっていることも見て取れます。

重水素の原子核は、陽子と中性子が1つずつ(2D1)でできていますから、ちょうど、重水素4原子核分、すなわち 4He2 原子核2個分が加わっていることになります。

Pd(パラジウム)の合金には、自身の体積の900倍もの水素ガスを吸収(吸蔵)して蓄える(かつ、透過させる)性質があり、この性質が上述の元素転換が起こることと関係しているのだとは思われますが、実は、つい最近、「クロスカップリング」でノーベル化学賞受賞の対象になった反応に使われている触媒もPdです。

また、「原子番号:+4、質量数:+8」が起こるにしても、前後の原子核のそれぞれが、同位体として安定であることは非常に重要です。つまり、ある元素の原子核に「原子番号:+4、質量数:+8」が起こっても、「そんな同位体は安定に存在しないよ」ということであれば、あまり上手くないわけです。

その点、天然に存在する141Prは、同じく天然に存在する133Csに対して、陽子数も中性子数もちょうど4個ずつ少なく、88Srは天然に存在する同位体比がいちばん多く(82.58%)、96Moも一定割合で天然に存在する核種です。

ということは――当然、ありとあらゆる元素と同位体で実験はされているはずですが(抜かりなく)――、①そもそも元素転換を起こすのか、②「原子番号:+4、質量数:+8」が起こったあとの核種が安定なのか(天然に存在するのか)といったことが、アプリオリな要件になりそうです。

で、CsもSrもアルカリ金属(Ⅰ族)、アルカリ土類(Ⅱ族)であるわけですが、遷移金属同士で、同様の反応が起こるのか? 興味はこの点に移ります。要は、金(ゴールド/Au)や白金(プラチナ/Pt)といった貴金属をつくり出せるような反応に応用できるのか? という点ですね。

「原子番号:+4、質量数:+8」という点に先に注目すると、Auの4つ手前の原子番号はRe(レニウム)というレアメタルの代表選手みたいな金属で、価格的にもAuの数倍~十数倍くらいになります。一方、Ptについては、4つ下の原子番号はW(タングステン)ですから、けっこう安めの金属です。WとPtの安定同位体をそれぞれ見比べてみると――186W74と194Pt78がいちばん対応性がよく、その次に184W74と192Pt78であることが分かります。

それ以外に、Ⅰ族、Ⅱ族を元の元素にした場合の可能性を見てみたところ、単純な対応関係は、138Ba56 → 146Nd60(Nd:ネオジムは強力な永久磁石としての需要が高い。ただし、現状ではBa:バリウムのほうが高価)、85Rb37 → 93Nb41(Nb:ニオブは超伝導素材として重要だが、Rb:ルビジウムのほうがかなり高価)くらいでした。

このように考えてくると、産業化にはまだまだ遠そうな感じです。が、最大の注目点は、186W74 → 194Pt78 の可能性でしょうか(個人的には)。

ところで、2D1のかわりに3T1(三重水素、トリチウム)を使うとどうなるのか、個人的には興味津々です。同じ理屈でいくと、原子番号が4個増えて、質量数が12個増えることになります(そんな単純なものではないことは承知ですが、類推の域ということでご勘弁を)。

そろそろ荒唐無稽な話になってますが――

199Hg80 → 211Po84 → 223Ra88 → 235U92(核燃料となるU同位体)

なんてことが、あり得るのかもしれません(期待を込めた冗談ですが)。

翻って、186W74 → 194Pt78 が遷移金属間ではいちばん面白そうと思いながらも、「原子番号:+4、質量数:+8」とちがうパターンを見出せないと、ビジネス的にはちょっと厳しそうだな、と思った次第です。

関連記事

コメント

常温核融合研究

はじめまして。
常温核融合は非常に重要なテーマだと思いますので認知が高まるのを楽しみにしています。それほど研究者は多くありませんが、世界中で研究が続けられています。
論文は以下のライブラリに多数収録されているのでご参考までに。
http://www.lenr-canr.org/

初コメント、ありがとうございます!

浅学俊郎さん

この分野は日本のお家芸で、たいへん期待が持てると思うのですが、「常温核融合(cool fusion)」という言い方が――1989年のユタ大学発のマーティン・フライシュマン&スタンレー・ポンズの事件?を髣髴とさせて――第一印象の時点で誤解を生む元だと思うんです。

何かもっといい、イノベーションを予感させる用語があればと。「元素転換」ていまひとつですし。

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://dohgo.blog22.fc2.com/tb.php/337-c088f3f8

美容整形